• 秋は観楓。

  •  あんなにも騒がしく朝も夜もなく鳴いていた蝉たちが、りーんりんと静かな鈴虫やコオロギの声に変わったのはいつの頃からだったのでしょうか。最近は移ろう季節の美しさを味わうことが難しくなってきたように感じられます。そればかりか、今年は夏らしさも、そして秋さえも感じることができないまま、冬の乾いた空気の冷たさを感じてしまうこともしばしば。日本ならではの四季折々の色や音のグラデーションを感じることができないのは寂しくさえ感じてしまいます。暦の上で八日には“寒露”となります。秋分から数えて十五日目となるこの日から、本格的な秋が深まります。山々も紅く染まり始め、紅葉狩りに出かけられる方も多いのではないでしょうか。今年初めてみる紅葉を“初紅葉”、やっとうっすらと色づき始めた頃のことを“薄紅葉”、秋独特の黄金色の光が降り注ぎ輝く姿を“照紅葉”と言ったりもします。紅葉を愛でるだけでも、これだけの美しい情緒的な言葉をもってその時々の情景を表現することができるのです。四季を感じづらい昨今ですが、目を凝らし耳を澄ませば、そこかしこに秋の深まりを告げる自然の移ろいを感じることができるでしょう。