鈴懸 すずかけ

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半夏生 蛸

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梅雨の終わりを表す言葉としてよく目にする「半夏生」の文字。夏至から数えて十一日目、もしくは十一日目から五日間までの期間を指す雑節の一つです。昔はこの半夏生を目安として、農家は田畑の仕事を終わらせ少しの間、休む習わしがあったようです。そしてこの半夏生には蛸を食べる風習があるのをご存知でしょうか。主には関西地方の習わしとされているようですが、蛸が食べられる由来となったのは、「田んぼの稲の根が、蛸の足のように四方八方に広がり根付きますように」といったものや、「稲穂が蛸の吸盤のようにしっかりと実りますように」といった農家の方の願いからのようです。どこの地方にとっても梅雨明け直前となる半夏生の時期は特に雨が多く「半夏雨」と呼ばれるほど。やっと田植えを終えた稲が立派に育つよう、雨空の下、祈らずにはおれなかったのでしょう。蛸にはそんな農家の方の切なる願掛けだけでなく、疲労回復や血行促進など体に嬉しい効果も期待されます。先人たちは田植えで疲れた時期に体を休め、蛸を食べることで元気を取り戻すという、実に理にかなった知恵をもって、梅雨明け間近の雨がひどく体力も奪われがちなこの期間を賢く乗り越えていたのですね。

雨空を楽しみながら夏支度

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六月二十一日は、二十四節気の「夏至」。一年のうちで最も昼間が長く夜が最も短い日であるこの日は、暦の上では夏ですが、本格的な夏の暑さを迎えるのはもう少し先のこと。夏至の約十日前あたりが「入梅」「梅雨入り」となり三十日ほど雨の日が続きます。梅雨は、中国で黴(かび)の生えやすい時期に降り続く雨という意味の「黴雨(ばいう)」と呼ばれていたものが、日本に伝来した際、梅の実が熟す頃に続く長雨であることから「梅」の字を当て、転じて「梅雨」となったという説もあります。日本で美しい呼び名に変わっても、黴の生えやすい時期であることは中国と同じ。高温多湿な夏を迎える前のこの頃に、衣服も調度品も冬ものから夏ものへ入れ替える衣替えは「更衣」と呼ばれ、平安時代からの慣習です。梅雨の合間の晴れ間には、米や豆などの穀物も日に干して虫を防いだりと、暮らしの知恵をいかし、本格的な夏を迎える準備をいたしましょう。六月は雨や曇りの日が続き、気分も憂鬱になってしまいがちですが、毎日同じように降っている雨のようでも、線のように降り注いだり、ぽつぽつと玉のように落ちてきたりと、雨の表情に気を留めると、日々違うことに気づかされます。季節の移り変わりに寄り添い、次に来る季節へ向かい暮らしを整えていくことは、四季を楽しむことのできる日本人ならではの豊かさでもあるのです。