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八朔の祝い 黒胡麻粥

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八朔とは八月朔日の意味で、朔日は一日、つまり八月一日(旧暦)のことを表します。昔、この頃は稲穂が実り始めるにも関わらず、二百十日や二百二十日と並ぶ悪天候となる日と恐れられていたため、この日に田の神に今年の豊作を祈願し、「田実(たのみ)の節句」が行われていたのです。大切な稲の収穫を直前に迎え、一日に収穫したばかりの初穂をお世話になった方に送っていたのですが、やがてこれが武家や公家の間でも「田の実」を「頼み」にかけ、日頃お世話になっている方に贈り物をして感謝を伝える日となり、今のお中元に繋がったともいわれています。昔、農民は暑さ対策として昼寝が認められていたようですが、この八朔の日を境に、昼寝をやめて本格的な収穫期を前に農作業に精を出す区切りの日ともされました。「八朔の祝い」は、収穫期前の最後の祭りで、疫病除けに効果があるとされたススキの穂を黒焼きにしたものをお粥に混ぜた尾花粥を食べる風習がありました。やがて、江戸の頃にこの風習が民間に広がる際に黒胡麻粥に変わったようです。黒胡麻そのものも暑さ疲れに効果的とされる食材ですので、夏バテ対策にはもってこいです。お粥はご飯からつくるよりも、お米から作る方がより滋養に良いとされます。古くから伝わる行事や、それに伴う行事食には、しきたりだけでなく気候や風土に合わせ、日本で暮らす私たちが健やかに過ごすための知恵が詰まっています。飽食の時代とされ、いつでも季節に関係なく欲しい物が手に入りやすい現代ですが、果たして健やかな毎日に繋がっているのでしょうか。今こそ自然の恵みに感謝して、先人が繋いできた食の知恵や風習を毎日に活かすことが、健やかに過ごせる秘訣なのかもしれません。

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