和菓子と歳時記

【冬至】

冬至 運盛りかぼちゃ


毎年のことながら、師走の慌ただしさは息もつけぬように感じます。街路樹もすっかり葉を落としきり肌寒い日が続いたかと思うと、時には厚い雲の合間から暖かな陽が射す日もあったりと、気温の変化に翻弄されながら忙しい最中の体調管理はなかなか大変です。今年中に済ませなくてはならないこと、年越しの準備など忙しさも大詰めの頃、冬至を迎えます。冬至は、その日が一年の中で最も太陽の位置が低く、沈むまでの時間が短い日です。この日を境に日照時間が伸びていくため、中国では太陽が生まれ変わる日と捉え、長い冬が終わり春が来るという意味の「一陽来復」として、悪かった運気が良い方向へ向かい始める縁起の良い日とされてきました。一方、日本では古くは一年中作物が豊富に採れていたわけではなく冬を越すのが大変であったため、夏に収穫し保存していたかぼちゃを大切に食べることで厄除けとしながら冬を越し、中国と同様、この冬至を境に良い運気が巡って来るとされていました。さらに冬至に「ん」がつくものを食べると「運」が呼び込めるといういわれがあり、銀杏、蓮根など「ん」のつく食べ物を食べることは「運盛り」と言って縁起を担ぐ習わしがありました。かぼちゃは古くは「南瓜(なんきん)」と呼ばれ「ん」がつく上、長期保存が可能でビタミンも豊富なため、風邪などの病気の予防や厄除けとしてよく食べられたようです。またこの運盛りは「いろはにほへと」が「ん」で終わることからも「ん」には次の新しい良いことが巡り来る一陽来復の願いが込められているともいわれます。巡り来る佳い歳を清々しく迎えるためにも、先人の知恵を借り、体を労わりながら忙しい師走を乗り切りたいものですね。

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