和菓子と歳時記

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啓蟄 鹹味 苦味

長い冬もそろそろ終わり、季節が春へと変わり始めてきました。寒さが続くつらい冬の間でも、生物や植物は活動を止めてしまっているわけではありません。やがて来る春からの活動期を活発に迎えるために、じっと栄養を蓄えエネルギーを補給する大切な時期なのです。そんな冬の間に蓄えたエネルギーをいざ使わん!と冬ごもりしていた生物たちが地上に這い出してくるのが啓蟄。弥生の節気です。地中深くにもぐって冬を過ごしていた虫や動物、そして植物だけでなく、冬の間に活動をゆるやかにしていたのは私たち人の体も同じ。春になると五臓の働きも体をめぐる気の流れも、この啓蟄を目安に活発に動き始めます。冬の間は体の働きを鈍くして脂肪や栄養を溜め込みますが、代謝が落ちるため毒素も溜め込まれてしまいます。春になると、だんだんと活発になる体は毒素を体外へ排出し始めますが、その毒素を排出するときに肝臓に負担がかかってしまうのです。この肝臓の働きを補うために良いとされるのが塩辛い味の鹹味(かんみ)。またよく春に言われる「春は苦味を盛れ」との言葉通り、苦味のある食材にも老廃物や毒素を体外へ排出する働きがあります。春の旬の食材に苦味があるものが多いのは、自然の摂理からなのでしょう。古くからのいわれで知ることのできる先人の食養生の知恵も自然の摂理にかなったもので、今の世に生きる人の体にもなお通じ、驚かされるばかりです。そろそろ虫たちが地上へ顔を出し、植物も柔らかな新芽を芽吹きます。私たちも体を整え、活動の準備開始とまいりましょう。

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