和菓子と歳時記

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端午の節句 粽、柏餅

木々の葉が一層その緑の濃さを増し、空にはそよぐ薫風に鯉が泳ぐ皐月となりました。五日の端午の節句、男児のいる家に掲げられるこいのぼり。これは、川をのぼって来るさまざまな魚の中でも鯉だけが滝を登りきり龍になるという故事から、鯉が立身出世の象徴とされ、男児が誕生した家はそれを世間に知らせるとともに、その子の出世と健康を願って天高く揚げる習わしとなったのです。この端午の節句の食べ物といえば、粽や柏餅。このどちらもが日本で最も古いお菓子の形であると言われていることをご存知でしょうか。もともと端午の節句の行事は、古く中国からわたって来たもの。粽はこの行事と一緒に中国よりわたってきた食べ物です。粽が食べられるようになった所以は、端午の節句にまつわる古い中国の高名な詩人である屈原の話に遡ります。人々に慕われていた屈原が陰謀により国を追われ、嘆き淵に身を投じたのが五月五日。人々は悲しみ、弔いの供物として米を入れた竹筒を川に投げ入れたのですが、屈原に届く前に龍に食べられてしまうというお告げがありました。そこで香りがあり龍が嫌う楝樹(れんじゅ)の葉で米を包み、龍が恐れる五色の糸で巻いたことで屈原の元へ供物が届いたことが今の粽のはじまりです。餅米、うるち米、葛粉などを練ったものを古くは茅(ちがや)の葉で巻いたことから「ちまき」と言われてきましたが、後に笹や菖蒲などで巻かれるようになり今に至ります。粽が節句の行事とともに中国より渡来した一方、柏餅は日本独自のもの。柏の木は新芽が出ない限り古い葉が落ちないことから、家系が絶えないという縁起をかつぎ「子孫繁栄」の願いを込め、食べられるのです。

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