和菓子と歳時記

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菖蒲の節句 蓬の柏餅

五月の節句といえば、男の子の成長を祝う端午の節句が一般的には知られるところですが、これの起源は「菖蒲の節句」だとされています。古くは中国で行われていた、五月の午の日に薬効の高い菖蒲を浸したお酒を飲んで厄祓いをする行事が伝わったものです。日本でも五月になると気温も湿度も高くなるため食べ物などが腐りやすい時期となるため、薬草を用いて病気を防ぐ習わしがありました。万物の成り立ちを表す木・火・土・金・水を色で示した五色の糸で菖蒲や蓬など香りの高い薬草を貫いた飾りを薬玉(くすだま)と呼び、九月九日の重陽の節句まで邪気払いとして軒先きに吊るしたり、菖蒲をお風呂に入れて体を清めるなどして無病息災を祈願したようです。節句に菖蒲を用いて厄除けをしていたことが、やがて菖蒲を武を尊ぶ「尚武(しょうぶ)」や「勝負」にかけ、男の子の成長を祝う節句となっていったようです。元々は「薬の日」とも言われていた菖蒲の節句。端午の節句の行事食として食べられる柏餅の柏の葉をめくると餡の入った蓬餅が包まれているのもこの名残のようです。季節の節目である節句。五月の節句を境とし、いよいよ日本は本格的な雨季へと入ります。菖蒲の節句の習わしや行事食は、湿気やカビが招く病気など、何かと不調を起こしやすいこの時期を菖蒲や蓬などの薬草で祓う、暮らしの知恵もあるのです。

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