○△□-しかく

連載 すずなり

和菓子の形は様々あれど、四角形をしたお菓子といえば、この金鍔が思い浮かびます。ほぼ正方形の表面を白い‥‥というよりもグレーにも見えるような、お菓子にしては珍しいほどに飾り気のない佇まい。そんな色を纏わずに華やかなお菓子が並ぶショーケースに鎮座している姿が、なんだか堂々としているようにも見えて、ガツンと真っ直ぐストレートに美味しさを伝えてくるような迫力さえ感じてしまうのです。ぎっしりと甘く炊いた小豆の粒餡を四角形に整え、表面全てに水で溶いた小麦粉をつけて熱した鉄板で焼き固めて仕上げたものです。材料もつくり方の工程も見た目通りのシンプルさです。だからこそ、素材の美味しさが味の決め手となるお菓子ともいえ、やはりショーケースで堂々として見えたのは、まんざらでもないのかもしれません。

ひと際目立つ四角形ですが、なぜこのような形なのか、そもそも名前の金鍔とはどういう意味なのか気になって、このお菓子のことを調べてみました。金鍔の鍔とは日本刀の鍔に由来しているようです。鍔とは刀の柄から刃に渡る境目に挟み、刃先をつなぎ鞘に納めるときの留め具となり、刀の柄を握る際には手を守るための武具です。お菓子の発祥時は鍔に似せてつくられ、形も丸みがあり、金ではなく銀鍔と呼ばれていたようです。真白ではなく、ほんのりとグレーがかった色味を帯びた色をしているのも、この由来からなのかもしれません。江戸の頃にこのお菓子が庶民の間でも楽しまれるようになってからは、金の方が縁起が良いと銀から金へ呼び名を変えて親しまれたようです。

さらに四角形へ姿を変えたのには、その後、庶民のお菓子として人気が高まるにつれ、効率良くつくったり、お客様が箱に入れてお持ち帰りいただく際に詰めやすいなど、人気があるがゆえお求めやすく変化していってのことでした。今では当たり前ですが、刀はもちろん、その刀鍔さえも見かけることは滅多にありませんし、形がそもそもの由来から変化して四角形へと遂げていたので、調べてみるまでこのお菓子の由来は想像がつかないものでしたが、昔から変わらず人気のお菓子であることは間違いないようです。

そして、何も知らずに堂々とした姿だと感じ取ってしまっていたこのお菓子ですが、まさか武士が命のように大切に扱ったとされる刀の、その鍔を模したものだったとは。お菓子を知ると、時折、古来からの日本人の姿も垣間見えてそれもまた面白いお菓子の楽しみ方なのです。

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