かき氷はじめました

連載 すずなり

白地に青い波模様、赤く染め抜かれた「氷」の一文字の吊り下げ旗が甘味処の軒先きに揺れ始めると、いよいよ日本の夏の到来です。2022年、今年は初夏からすでに連日、猛暑の予報がされています。鈴懸の本店、茶舗でも吊り下げ旗は出しておりませんが、店内ではひんやりとしたかき氷を楽しんでいただけます。お味は3種がそれぞれ、少しずつ時期をずらして登場します。まず最初は「八女金時」。この味だけは、かき氷のシーズンを終える10月頃までお楽しみいただけます。福岡県のお茶処、八女星野村の抹茶でつくる蜜は、苦味を立てないよう火を入れずに、ゆっくりとつくります。つくりたてのもちもちの白玉と、鈴懸のお菓子にも使われているつぶあんをたっぷり添えておりますので、抹茶のほんのりとした苦味に合わせお召し上がりください。
「氷菓 あまおう」は、旬の美味しい時に収穫された福岡特産の〝あまおう〟だけで蜜をつくり、いちごの果汁そのままの味わいで、6月から8月末頃までお楽しみいただけます。あまおうの果皮が残る、さらりとした果汁蜜がたっぷりとかけられた氷に添えているのはミルクアイス。卵は使用せず、練乳と牛乳と水飴でつくっていますので、口の中に残る甘さが無く、さっぱりとした味わいです。いちごの中でも甘さの強い品種で知られるあまおう。冬の鈴懸で人気の「苺大福」もあまおうを堪能していただけるお菓子ですが、夏は姿を変えて氷でその美味しさを味わってみてはいかがでしょう。

そして、鈴懸らしい氷といえるのは「氷菓 新しょうが」です。「生姜のかき氷?」と驚かれた方、ぜひお試しください!新しょうがは皮むきをせずに、蜂蜜で辛味を抑えた蜜に仕上げ、口休めには上品な甘さの白小豆と、少しだけ黄粉をふった白玉、蜜漬けした甘生姜、そして大葉を一枚。かき氷としては珍しい取り合わせかもしれませんが、さっぱりとした甘さがくせになる一品です。

実は新生姜は、福岡では春の「博多どんたく」、夏の「博多祇園山笠」に並ぶ福岡三大祭に数えられる秋の「筥崎宮放生会(はこざきぐう ほうじょうや)」の風物詩。昔、筥崎宮の辺りに生姜畑が広がっていたことや、福岡にゆかりの深い黒田官兵衛と恩人である武将との新生姜にまつわる逸話が残っていたりすることに由来し、今でも放生会では新生姜が並び、売られているのです。鈴懸の「氷菓 新しょうが」を楽しんでいただける期間は、この放生会のお祭りの頃まで。ただ、どの種類もご提供する期間は毎年変わりますので、ぜひお早めに!

夏の時期の茶舗だけで楽しめる鈴懸のかき氷は、どれも〝ふわふわ〟とは違う、昔ながらの氷らしい食感で柔らかな口どけです。お好みで練乳をかけても召し上がれますので、ご希望の方はどうぞお申し付けください。氷の冷たさを心地よく感じていただけるよう、口当たりの良い木製の匙でご提供しています。鈴懸のかき氷は、どこかノスタルジーを感じさせる味わい。これは茶舗でお出ししているお食事のメニューもですが、店主が昔〝美味しかった〟と感じていた舌の記憶を大切につくっています。一つ一つ氷もシロップも、ご注文をいただいてから奥の厨房で手づくりしてお出ししておりますので、少しお待たせするかもしれません。どうぞゆっくりとお寛ぎいただきながら外からの熱気を冷まし、丁寧につくられた優しい味わいのかき氷で涼をお楽しみください。

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