和菓子と歳時記

【お中元】

お中元 素麺


いよいよ夏がやって来る濃厚な気配を外気に感じ取ることができるようになってきました。しかし、ここ最近は今までにないほどに梅雨の時期の雨は勢いを増し、夏は暑く照りつける日差しに強さを感じます。日常が変わらず流れていく中で、急激に変化していく季節の変わり目や、やがて来る夏の盛りを健やかに乗り切るための体調管理には十分に気を配らなくてはなりません。そんな時期に自分や家族の体を気遣うのはもちろんのこと、大切な方や日頃お世話になっている方を気遣い、贈り物をお届けする習わしがお中元です。もともとはお盆の先祖供養の行事に由来し、室町の頃になると先祖の供養だけでなく生きている人への無事を喜び交友のある人を訪ねるようになり、やがて江戸の頃には手土産を持って相手先を訪問するようになった習わしが今に続いているとされています。今でもお中元の品によく選ばれる物の一つとして素麺が挙げられます。これはお中元の慣習が盛んに行われていた江戸時代では贅沢品とされていたために贈り物として選ばれていたということもありますが、細く長い素麺の姿に「長いおつきあいをお願いします」との意味が込められ、夏の贈り物の定番となっているようです。昨今ではこのような言葉や意味をかけてお贈りする素麺だけでなく、過酷な夏の盛りを快適に過ごしていただくために体には涼をもたらし気持ちを和らげる水菓子や生菓子、滋養がつくもなども多く選ばれています。直接訪問してお渡しできずとも大切に思っている先様を気遣い、品物に思いを込めてお贈りするお中元は、今の時代もなお大切に続けていきたい日本独自の美しい文化です。

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