和菓子と歳時記

【立春】

いのち満ちる木の葉採り月


二○一三年は端午の節句の五月五日がちょうど“立夏”にあたり、この日から立秋の前日までが夏季となります。草木が青々と新緑へと色を重ね、風も爽やかに、夏の気配が漂ってきます。立夏が過ぎると蛙が鳴き始め、田植えが始まり、麦が穂を出します。二十四節気でこの頃を“小満”といいます。これは秋に撒いた麦などの穂がつくため、ひと安心(少し満足)するという意味ですが、田畑の農作物が生きる糧であった私たち日本人にとって、麦などの穂がつく作物の実りの兆しは重要なことだったのです。作物も生きものも、命が満ちていく頃が今なのです。また、古事記に記述があるほどの長い歴史をもつ養蚕も日本では古くから盛んに行われてきたものであり、その大切な蚕の餌となる桑の葉を摘む頃でもあったため、 “木の葉採り月(このはとりつき)”とも呼ばれます。二十四節気のもつ意味や、旧暦の呼び名はそれぞれ美しくもあり、今に生きる私たちに、本来の人々の生き方や自然の営みをも知らせてくれるものなのです。

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