和菓子と歳時記

【夏至】

雨空を楽しみながら夏支度


六月二十一日は、二十四節気の「夏至」。一年のうちで最も昼間が長く夜が最も短い日であるこの日は、暦の上では夏ですが、本格的な夏の暑さを迎えるのはもう少し先のこと。夏至の約十日前あたりが「入梅」「梅雨入り」となり三十日ほど雨の日が続きます。梅雨は、中国で黴(かび)の生えやすい時期に降り続く雨という意味の「黴雨(ばいう)」と呼ばれていたものが、日本に伝来した際、梅の実が熟す頃に続く長雨であることから「梅」の字を当て、転じて「梅雨」となったという説もあります。日本で美しい呼び名に変わっても、黴の生えやすい時期であることは中国と同じ。高温多湿な夏を迎える前のこの頃に、衣服も調度品も冬ものから夏ものへ入れ替える衣替えは「更衣」と呼ばれ、平安時代からの慣習です。梅雨の合間の晴れ間には、米や豆などの穀物も日に干して虫を防いだりと、暮らしの知恵をいかし、本格的な夏を迎える準備をいたしましょう。六月は雨や曇りの日が続き、気分も憂鬱になってしまいがちですが、毎日同じように降っている雨のようでも、線のように降り注いだり、ぽつぽつと玉のように落ちてきたりと、雨の表情に気を留めると、日々違うことに気づかされます。季節の移り変わりに寄り添い、次に来る季節へ向かい暮らしを整えていくことは、四季を楽しむことのできる日本人ならではの豊かさでもあるのです。

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