• いのち満ちる木の葉採り月。

  • 二○一三年は端午の節句の五月五日がちょうど“立夏”にあたり、この日から立秋の前日までが夏季となります。草木が青々と新緑へと色を重ね、風も爽やかに、夏の気配が漂ってきます。立夏が過ぎると蛙が鳴き始め、田植えが始まり、麦が穂を出します。二十四節気でこの頃を“小満”といいます。これは秋に撒いた麦などの穂がつくため、ひと安心(少し満足)するという意味ですが、田畑の農作物が生きる糧であった私たち日本人にとって、麦などの穂がつく作物の実りの兆しは重要なことだったのです。作物も生きものも、命が満ちていく頃が今なのです。また、古事記に記述があるほどの長い歴史をもつ養蚕も日本では古くから盛んに行われてきたものであり、その大切な蚕の餌となる桑の葉を摘む頃でもあったため、 “木の葉採り月(このはとりつき)”とも呼ばれます。二十四節気のもつ意味や、旧暦の呼び名はそれぞれ美しくもあり、今に生きる私たちに、本来の人々の生き方や自然の営みをも知らせてくれるものなのです。
  • 山滴る。若鮎で川遊び。

    鮎は秋に生まれ、海で冬を過ごし、春先に大きく成長して川をのぼります。煌めく水面に新緑が濃く映える頃に鮎漁が解禁されると、夏が一気に訪れます。鮎は姿も美しく、胡瓜や西瓜に例えられるほどの爽やかな香りを帯びることから香魚とも書かれ、和菓子の世界でも、店頭に並ぶ美しい鮎の姿を模した愛らしい“若鮎”が夏の訪れを告げます。和菓子には美しい日本の季節を映したものが多くあります。
    “山滴る”とは、滴るようなみずみずしい緑溢れる夏山の表情をさした夏の季語。そして今こそまさに山滴る、爽やかな初夏。夏の時期だけの和菓子“若鮎”をいただけるのも、この季節ならではです。美しい山あいの川面を涼しげに泳ぐ鮎の姿を眺めながら、せせらぎに耳を澄ませて和菓子“若鮎”で一息。そんな風に川遊びや山遊びをしながら、和菓子とともに季節を感じるのも素敵な過ごし方です。
  • お菓子:若鮎