• 入梅
    梅しごと

  •  六月に入ると、香りよく、ふっくらとみずみずしい青梅が店先に並び始め、十一日には暦の上での梅雨入りとなる入梅を迎えます。じめじめと続く「梅雨」。暦では「入梅」。なぜ「梅」という字が使われるのでしょう。「梅雨」の語源には諸説ありますが、もともと中国で生まれたもの。梅の実が熟す頃に降る雨のため中国で「梅雨(ばいう)」と呼ばれたり、また黴(かび)が生えやすい頃の雨という意味で「黴雨(ばいう)」と呼んでいたものが語感が良くない黴の部分を同じ読みで季節に合わせ梅の字に置き換えたともいわれます。日本に梅雨が伝わった後は、梅の実が熟して潰れる時期で「漬ゆ(つゆ)」とされたり「露(つゆ)」を連想して梅雨を「つゆ」と呼ばれ始めたともいわれます。古くから梅の時期とされる六月。梅の熟し具合で一年のうちで梅仕事ができるのは、この時期だけ。実が青く硬い六月の上旬は、梅肉エキスや醤油漬け、梅酒などを作ります。実が黄色く色づき始める中旬は梅干しづくり。熟して実が黄色になり、甘く香り始めると梅しごとも終盤。この頃の梅はジャムになどに適します。
     「梅はその日の難逃れ」といわれ、朝出かける前に梅干しを食べるとその日の災難を免れるともいわれます。疫病を祓い健康を願うため、旧暦の六月十六日に和菓子お供えしていただいたり、餅を十六個食べる「嘉祥喰い(かじょうぐい)」という習わしがあります。ほかにも十六日に採れた梅で梅干しをつくり、旅立ちの日に食べると災難を逃れるという言い伝えから、その梅干しは「嘉祥の梅」といわれます。明治の頃まで病疫を逃れ、健康招福のめでたい行事として盛んだったこの嘉祥の祝は、「和菓子の日」として今に伝えられています。黴が生えやすいこの時期。殺菌効果が高く、美味しい梅を食べて健やかに過ごしたいものです。