銅鑼からどらやき

連載 すずなり

お菓子の世界にも流行があり、次々と新しい食感だったり、聞きなれない名前のお菓子が目まぐるしく登場しては消えていきます。そんな中でおじいちゃん、おばあちゃんの世代から、いえ、もっと前の世代から今も人気が続く日本人が思う“おやつ”の定番を問われたなら、その一つに “どら焼き”が挙がるのではないでしょうか。

それもそのはず。どら焼きの始まりは古いものでは平安時代、武蔵坊弁慶が合戦に敗れた際にお世話をしていただいた民家で銅鑼(どら)を借りて鉄板の代わりに用い、小麦粉を使った薄い生地を焼いた菓子を作ってふるまったことに由来するという説があります。江戸時代にはすでに伝来していた砂糖を用いた甘い餡を丸く焼いた生地でくるりと巻いたお菓子が作られるようになり、明治時代には銅鑼のように平たく丸く焼いた1枚の生地を半折りして餡を包む形に変化し、さらに後になると西洋から伝来したホットケーキの影響を受けてふっくらと焼いた2枚の生地で餡をはさむ今の“どらやき”を思わせる形に変化しながら定着していったとされているようです。昔話の登場人物のようにも思える弁慶に由来するほどの古くから少しずつ姿や味わいを進化させつつ、私たち日本人の舌を楽しませてきた“どらやき”を、鈴懸では2種の味わいでご用意いたしました。どちらもふっくらと柔らかく焼き上げた厚みのある2枚の生地で餡をはさみます。餡は、どちらもいわゆる小豆あんではありません。


一つ目の「どらやき」の餡は、北海道産手亡豆のつぶあんです。どらやきとしては、少し珍しいかもしれません。白く美しい皮をした手亡豆は白いんげん豆の一種で、どこか品の良さがある風味と甘みが特徴で滑らかな食感を持ちます。手亡豆ならではの大きくふっくらとした粒感と爽やかな甘みをいかした餡に仕立て、コクのある卵で虎模様に焼いた生地ではさんだ、ひと味違う美味しさを感じていただける「どらやき」です。

もう一つは、鈴懸の地元福岡県八女産の抹茶を使った「抹茶どらやき」です。全国でも有数のお茶の産地で、その品質も高いことで知られる八女産の香り高い上質な抹茶を、生地にも餡にもたっぷりと練り込んだことで濃厚な抹茶の味わいを堪能いただける一品です。抹茶フレーバーにはない清々しい香りと、独特な青々しい苦味は、本物の抹茶だけが持つ豊かな風味なのだとお気づきいただけると思います。


とはいえ、“どらやき”といえば弁慶が熱した銅鑼の上に生地を垂らして焼いた頃から今に続く、庶民的な親しみある味わいのお菓子です。やはり、こぼれるほどの手亡豆が詰まった「どらやき」も、八女産抹茶の風味をたっぷりとお楽しみいただける「抹茶どらやき」も手でそのまま持って、ぱくぱくと頬張るのが一番の醍醐味でしょう。

※「どらやき」は通年、「抹茶どらやき」は6月20日〜7月中旬までの販売となります。

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