
鈴懸では、自分たちが食べたいと思える和菓子をつくり続け、気づけば100年という月日が過ぎていました。長い時間の中で時代の変化とともに、たくさんの試行錯誤をしてきたものです。昔は最中やどらやきといったお菓子はお供え物や贈り物に遣われることも多く、今よりも大きなサイズでしっかりと甘さがあり、日持ちのするものが主流で、鈴懸でもそのようなお菓子を作っていました。そんな中、今から約30年ほど前、現店主が「お菓子は日持ちを優先するのではなく、朝つくったものを一番美味しいその日にお客様に食べていただきたい。」と、当時の鈴懸とは別の形態で朝生菓子のみを販売する「鈴(りん)」というお店を出したのです。その時から今に続く定番のお菓子が、鈴乃○餅(すずのえんもち)や鈴乃最中(すずのもなか)です。

鈴乃○餅の特徴の一つは、もっちりとした皮。糯米特有の風味がしっかりと感じられる佐賀県産のヒヨクモチを用いて、職人が一枚一枚手焼きしています。ふっくらと焼き上がった皮で包むのは、もう一つの特徴である、特別な餡。鈴懸のお菓子には餡を使ったお菓子はたくさんありますが、この鈴乃○餅は他のお菓子の餡とは違う、鈴乃○餅だけのためにつくった餡なのです。北海道十勝産の小豆の粒が入った、口当たりがさらりとしたこしあんです。こしあんとも、粒あんとも違う餡。この鈴乃○餅に合う餡は、粒あんではない。だからといって、こしあんでもないと味の模索をする中で、餡の具合や甘さなど引き算を繰り返して、今のさらりとしたこしあんに最後に少しだけ粒を足した餡におさまったとき、もっちりとした皮に相性よく包まれることになったのです。

昔とは違い、多種多様のお菓子が存在する今。空いた小腹を満たすようなお菓子もあれば、ひと口でしっかりと甘さを楽しみたいお菓子もあるでしょう。一つ食べたらお腹が満足してしまうようなどら焼きとは違う、例えば食事の後でも楽しめるようなお菓子をという思いから、30年前に誕生した鈴乃○餅。当時はこの小さなサイズのお菓子は珍しがられたものです。一見、どらやきの様をしていますが、素朴ながらもどこか品の良さを感じさせる味わいで、ひと口ふた口で食べることのできる、サイズも味もどらやきとは全く違った楽しみ方ができるお菓子です。

鈴懸の歩みの中で「鈴」というお店は、とても大切な一歩でした。あの頃のお菓子づくり、店づくりの思いが今に続く鈴懸の原点となっていると言っても過言ではありません。そんな鈴懸の歩みを全て知っているのが鈴乃○餅なのです。小さくてまぁるい鈴乃○餅は、鈴懸の店主の思い、職人の思いをお客様に繋げてくれる○(えん、縁)なのです。ご自身のおやつや、食後の甘味としてお楽しみいただいたり、ちょっとしたお手土産にお遣いいただけると嬉しく思います。私たちの大切な鈴乃○餅が、お客様と大切な方との縁を繋ぐ○となりますように。
