夏の名残

連載 すずなり

暦の上では秋に分類されるはずの9月。それなのに現実は、まだまだ夏が続いているような暑さです。盛夏の頃に比べれば、幾分過ごしやすくはなったとはいえ、昼間の暑さは耐え難い日もありますよね。そんな秋の訪れを遠くに感じる今の時期にふさわしい、体を冷やし過ぎずに涼を感じていただける和スイーツを鈴懸本店の茶舗でご用意しております。たとえば「クリームぜんざい」。北海道産十勝小豆をたっぷり使った冷たいぜんざいです。じっくりと丁寧に煮た小豆はひと粒ひと粒がしっかりと大きく、口に入れると柔らかく解けます。手作りしたまん丸のバニラアイスはボリュウムがありながらも、甘過ぎずにコクのある味わいです。ぜんざいだけで、アイスだけで口に運べば、それぞれの美味しさが際立ち、そしてアイスとぜんざいを合わせて食べると抜群の相性の良さで、シンプルながらも優しい甘さが広がる口福を感じていただける一品です。

「冷ぜんざい」は、茶舗の厨房で毎朝手作りしている、もちもちの白玉と一緒にぜんざいの美味しさを堪能いただけます。熱いぜんざいは小豆の香りが立つものですが、これは冷たくてもしっかりと小豆の優しい香りが立ち、白玉に絡めていただくと、一層美味しさが引き立ちます。鈴乃最中の皮でぜんざいをすくって食べていただくのも、味わいのアクセント。定番の「鈴乃最中」の味わいとはひと味違う、冷たいぜんざいを最中に合わせてお楽しみください。

鈴懸の特製アイスを存分にご堪能いただけるのは「すずのアイス」です。抹茶、キャラメル、バニラ、黒胡麻の4種のアイスの中からお好みで2種お選びいただけます。鈴乃最中の皮を5枚添えていますので、お好きなだけアイスを詰めて、サクサクのアイス最中の美味しさを繰り返しお楽しみいただけます。4種のアイスはそれぞれの素材の味が濃くいかされながらも、さっぱりとした後味で、一緒にお出ししているほうじ茶ともよく合います。最中に詰めて食べる楽しさもあって、お子様にも人気のメニューとなっております。

そして、ぜひおすすめしたいのは今年新しく登場した「葛餅」です。ぷるんと柔らかで艶やかな葛餅は、九州産の本葛を使用しており、本葛ならではの風味ともっちりとした食感が堪能できます。実はこの葛餅、鈴懸の厨房長の肝いりの一品なのです。葛餅といえば奈良県の吉野葛が有名ですが、美しい水と気候に恵まれた九州・筑前秋月もまた、本葛の産地として知られています。厨房長は、この秋月で食べた葛餅があまりにも美味しく印象的で、幼いながらも度々家で自分の手で葛餅を作っていたほど魅了されたと言います。今でも大好きなあの本葛でつくった葛餅の味わいを楽しみたいと思いつつも、九州では食べることができる甘味処は少ないことを残念に思っていました。ならば鈴懸で!と、今年の夏の始めに茶舗のメニューに取り入れたところ、すでに人気の一品となりました。程よくひんやりとした口当たりで、体にも良い葛。黄粉と黒蜜をお好みでかけて、九州産の本葛の美味しさを、ぜひ味わってみてくださいね。
昨今は昔と比べ、秋の訪れがひと月は遅くなっているように感じます。しばらく続きそうな夏の名残。まだ強く陽が差す日には、ゆったりとした時間の流れる鈴懸の茶舗で、少し休憩していきませんか。今の時期ならではの体に嬉しいひと品を楽しみながら、過ぎゆく夏をもう少しだけ楽しんではいかがでしょう。

 

連載 すずなり

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