暑さがようやく収まって月が美しい季節となりました。涼やかな風が心地良い日は、冴えた空に輝く月を眺めながら、そぞろ歩きが楽しいものです。夏の頃とは違い、ひときわ輝きを放ち始める秋の月には、古くから人々がしてきたように思わず何かを願ったり、感謝したりしてしまいたくなるほど神々しさを感じます。多くの作物が収穫される秋。お月見は、その年に穫れた作物を備えて豊穣を感謝する習わしです。中秋の名月ともいわれる十五夜の月が美しいことはよく知られ、お月見といえば十五夜の月と思われていますが、実は後に巡ってくるため「後(のち)の月」といわれる十三夜の月もやはり美しく、この美しい二つの月を合わせて「二夜(ふたよ)の月」とされます。またお月見は今年の実りに感謝し、その時期に収穫される作物を備えてこれからも豊穣が続くことを願うことから、お供えする作物に由来して「芋名月、栗名月・豆名月」ともよばれます。なんだかとたんに月に親しみが湧いてきますよね。
十五夜は旧暦8月15日(今年は9月17日)。この時期に収穫されるサツマイモや里芋を備えることから「芋名月」とも呼ばれます。今年の芋名月はご覧になられましたか?酷暑が長く続いた今年は特に、空に大きく輝く十五夜の芋名月を見た時、「やっと秋が来た」と、どこかほっとしたような思いがありました。芋名月が昇ればサツマイモや里芋が美味しい時期となった合図。お月見をされた方も、そうでない方も今の時期の美味しい芋類をぜひ堪能してくださいね。ちなみにお月見といえばお月見団子も知られていますが、これは里芋の形に団子を似せて丸く作り、邪気を祓うと言われる赤い小豆を添えて備えられたことに由来するようです。鈴懸では芋名月を過ぎた頃から、この時期の甘いサツマイモを使った「甘芋」が登場します。ほくほくに蒸し上げて滑らかに裏漉しし、しろあんを加えて焼いた、いわば和風のスイートポテト。小さなお子さんも思わず手が伸びる優しい味わいです。お持ち帰りいただいたままの常温でも美味しくいただけますが、少し温めたり、冷蔵庫で冷やしていただいてもまた違った味わいとなります。そのまま手でパクリと齧っていただける、秋のおやつにおすすめのお菓子です。
そして、これからやってくる後の月、十三夜。旧暦の9月13日(今年は10月15日)に美しい月が昇ります。この十三夜の頃に収穫される栗や豆(大豆、枝豆)を供えられることから、この十三夜は「栗名月・豆名月」と呼ばれます。特に秋の味覚として人気の高い栗は、自然のまろやかな甘みと香りが強く、お菓子にしても栗ならではの風味が豊かに広がります。鈴懸でも、秋になれば次々と栗を使ったお菓子が店頭に並びますので、この時期を首を長くして待っていただいているお客様も多いようです。栗を使った商品だけで10種類ほどご用意しています。オンラインショップでもお求めいただける「かの実 栗」は、厳選された国産の栗をなめらかに練り上げた栗きんとんのような、やわらかい羊羹です。濃厚な栗が持つ深い甘みをそのままダイレクトに味わうことができる、栗好きにはたまらない一品です。秋は満月だけでなく、満ちても欠けても、それぞれに美しい月を眺めることができますので、月を眺めながらこれから収穫が始まる秋の味覚を存分にお楽しみください。もちろん、豊穣への感謝の気持ちをお忘れなく。