吉祥揃い踏み

連載 すずなり

世界各国、幸福の印や験担ぎ(げんかつぎ)など、福をもたらすアイテムや言葉はたくさん存在します。人は誰しも幸せに生きたいもの。日本でも古くよりその願いが言葉にも、紋様にも様々に込められてきました。そんな福をもたらしてくれる縁起の良いものをたくさん目にするのは、やはり新しい歳神様をお迎えする年末年始でしょう。元旦に家々に訪れて、新しい年の実りや幸福を願うため、お正月飾りやお節料理にはたくさんの吉祥文が施されます。「松竹梅」もその一つ。冬でも青々とした葉を茂らせ、樹齢も長いことから不老長寿の象徴とされる「松」、冬でも緑色を保ち、地中に根を張り巡らせる「竹」は、新芽が次々に芽生え真っ直ぐに成長することから子孫繁栄の象徴とされています。そして「梅」は冬の寒い季節に他の木々よりも先んじて花を咲かせることから喜びや華やかさを表すとされています。

近頃はあまり見なくなった「獅子舞」ですが、昔は空想上の聖獣である獅子が疫病を追い払う信仰の対象とされ、初詣の神社などで獅子舞が舞われていました。この獅子に頭を咬んでもらえると「獅子が悪いものを食べてくれた」という意味から無病息災のご利益のある縁起物とされています。

縁起物といえば、お正月にみる初夢に「一富士二鷹三茄子」の順で出てくると縁起が良いとされることはよく知られています。全国の和菓子屋は、宮中行事である新年最初の歌会「歌会始」の御題に沿って、勅題菓子を作ります。2025年のお題は「夢」。鈴懸ではこの「夢」のお題から、初夢の縁起物の1番目にあげられる富士山をお菓子に表し、菓子名は「万福(ばんぷく)」としました。富士山の夢をみることは、目標に向け努力してきたことが実るとされるのだとか。これまでの努力が実り、大きな幸運に恵まれる一年となるよう願いを込めた一品です。2025年の干支は「巳」。蛇、特に白蛇は金運上昇や繁栄の象徴ともされ、巳年は吉祥の年とされます。花々がほころぶ頃、暖かな野に姿を現す蛇。深紅のまなざしで新たな一年を静かに見すえる純白の蛇の姿に、力強く邁進し、実り多き一年となりますよう願いを込めて鈴懸の巳年の干支菓子は「吉祥(きっしょう)」と名づけ、ご用意しております。

そしてもう一つ。干支棹菓子「巳」も、縁起の良い白蛇を表しました。蛇は脱皮を繰り返す様子から、復活や再生を意味し、「巳」を「実」に掛けて巳年は実を結ぶ縁起の良い年とされています。日本のお正月は、その年の繁栄と幸運を祈り、食べ物や着物の柄、装飾品など様々に吉祥が溢れています。縁起の良いこれらを目にしたり、食すことで福を取り入れて、新たなる年が皆様にとって益々の幸福に包まれる1年となりますようお祈りしております。

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