招福祈願 笑門来福

連載 すずなり

残り僅かとなった2024年。皆様にとって、どのような一年でしたでしょうか。今の時代を生きている私たち自身が驚いてしまうほどにAIをはじめとするテクノロジーの進化が急速過ぎて、瞬きをしている間ですら、まるで知らなかった世界へぐんぐん推し進められているような気もします。私たちが便利に楽に生きていくために進化を重ねる一方で、共生しているはずの自然物たちとの調和は果たしてとれているのだろうか、なんて、後ろを振り返りながら疑問に思っている人も少なからずいるのではないでしょうか。ひとは人として生き続けるために、共に在るあらゆるものに畏敬の念を忘れずに過ごしていきたいと、時を重ねるほどに思うのです。来る2025年は巳年。脱皮を繰り返す蛇のごとく、成長や変革の年とされます。邪気を避け、増益と長寿を授ける文殊菩薩(普賢菩薩)が巳年の守り神。今は、特に都市部の家庭の庭先で姿を見ることが無くなった、蛇(アオダイショウ)は、かつては家にいるネズミを捕る家の守り神として存在していました。そんな蛇にまるで年神様が姿を変えたような、とぐろを巻いた白蛇が鏡餅にも見えるようなユーモラスな蛇の姿で、神戸智行先生が2025年の干支の掛け紙に「皆様が神さまに守られて健やかに過ごせますように」と願いを込めて描いてくれました。

神戸先生の干支の掛け紙と並んで、毎年ご好評をいただいているのが書家の桑原呂翁先生の手による干支の紙袋。

「巳」という文字の成り立ちは、そのまま蛇の象形ともう一つ、胎児の象形ともされます。巳は中国では草木の成長が極限と達した状態を表すとされ、次の生命が宿り始める時期とされます。干支では脱皮することで成長していく蛇の姿に、この「巳」の文字をあてたとされているようです。呂翁先生の書かれた2025年の「巳」の文字は、今まさに脱皮をし終え、次の新しい時代を見据えて頭をもたげた蛇の姿にも見えてきます。

そして鈴懸の年明といえば、年の初めに楽しい和みの時間をお過ごしいただけるよう、1月2日・3日の2日間だけの限定品として登場する縁起菓子「万福しるこ(ばんぷくしるこ)」。干支の「巳」の文字と、松葉に梅の図案の焼印を施した2種の角最中の優しいお味のお汁粉です。お椀に最中を割り入れ、お湯を注いでいただく温かなお菓子です。最中にお湯を当てて注げば、香ばしい香りが立ち、とろりとほどけた汁粉に柔らかい餅のような食感の最中が楽しめます。汁粉を作った後に、最中をそのまま乗せたり、お好みの大きさに割り入れれば、サクサクの食感が甘いお汁粉を引き立てて美味しくいただけます。2つの最中、どうぞお好みの食べ方を見つけてみてくださいね。

この万福しるこは2024年に引き続き、九谷焼の上出瓷藝 上出長右衛門窯の六代目、上出惠悟氏に描いて頂いた特別仕様の紙袋でのお渡しとなります。九谷焼ならではの赤、黄、緑、紫、紺青の「五彩」の彩りで描かれたおめでたい図

案と、干支の蛇がいつもの鈴懸の「菓」の文字を取り囲み華やかに舞います。年始のお手土産やお遣いものとしても最適な一品です。

さて巳年はどんな年となるでしょうか。巳年は「実を結ぶ年」ともされるようです。これまで以上に自然に感謝と畏敬の念を忘れずに蛇のように脱皮をし、新たな年に向かってグッと首をもたげ、実り多き年としたいものです。一年の福徳をもって山から降りて家々に訪れる年神様は、干支の飾りをしている家に来てくださるのだとか。また、干支のものを人に贈れば招福祈願となるのだそうです。鈴懸では皆様のご家庭に、そして皆様の大切な方に2025年の福徳がもたらされることを願い、巳年の干支ものをご用意してお待ちしております。2025年、どうぞ笑顔の多い佳いお年をお迎えくださいませ。

連載 すずなり

オンラインショップ鈴懸オンラインショップはこちら