往古来今 – 菜々菓

連載 すずなり

食間や食後にちょっとつまんだり、ときにはご褒美として少し手の込んだものや贅沢なものを選んで楽しめるお菓子。皆さんも大好きですよね?お菓子とひとことで言っても、甘いものでは餡や砂糖、生クリームに蜂蜜、しょっぱいものでは塩や味噌など、味付けもさまざま。昔から日本で親しまれていたものもあれば、アメリカやヨーロッパ、アジアの小さな国などで楽しまれているデザートやお菓子など、今ではありとあらゆるものを手に入れることができ、お好みやシチュエーションに合わせて選ぶことができます。でもこのお菓子、始まりはどんなものだったのでしょう?いつ頃からお菓子は人々の生活の中にあり、それはどんなものだったのでしょう?「往古来今(おうこらいこん)」では、そんなお菓子の興味深い歩みを遡ってみたいと思います。

日本でのお菓子の始まりはというと、遥か昔、縄文時代にまで遡ります。今からなんと約16,000年前、土器を用いて食料の保存を始めた、あの縄文時代です。土器を使えるようになったため、木の実や山菜などの野菜やきのこを山で採ったり、動物を狩猟したり、海で獲った魚や貝を煮炊きして食べていたとされています。

この時代にはまだ砂糖は無く、お菓子といっても野山でどんぐりやくるみなどの木の実を砕いて丸めたもの。きっと皆さんが想像されるお菓子とは程遠いものだったことでしょう。とはいえ、脂質の多い木の実や甘みを感じる野菜や果物などは、当時としては素材そのものが特別なお菓子だったのかもしれません。

日本の美味しい素材を活かした鈴懸のお菓子「菜々菓」は、季節の野菜や果物を蜜煮して砂糖をまぶしただけのシンプルなお菓子。縄文時代には砂糖はありませんでしたので、菜々菓ほどの甘みは無かったとはいえ、素材そのものが活きた味わいは、お菓子の始まりを想起させるようなシンプルさです。季節が巡るごとに変わる素材は、旬ならではの美味しさを十二分に感じることができます。今月は「さつま芋」「金柑」「若桃」がお楽しみいただけます。季節によって「柚子」などの果実だけでなく「人参」「蓮根」「牛蒡」「生姜」など、野菜の菜々菓も登場しますのでお好みの素材の旬の時期は、どうぞお見逃しなく。

今、私たちが食べているお菓子を思い浮かべるとき、いえ、お菓子だけでなく和食を調理する際にも砂糖の甘みは欠かせない大切な要素。そんな砂糖が日本で用いられるようになるのは、縄文時代からまだまだずっと後のこと。これから時々、お菓子がもつ記憶を辿り、今、豊富に親しまれている甘味、お菓子の歩みをご紹介していきたいと思います。

 

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