「お菓子」と「おやつ」。同じように使われますが、実は少し違います。食事と食事の合間の間食として食べられるのがおやつ。江戸時代に使われていた時間の単位で、午後2時から4時くらいの頃を「八つ時」といい、まだ農民が多かった江戸時代では、その八つ時にエネルギーや栄養補給として簡単な食事をとっていたことを「御八つ」と呼んでいたことに由来するようです。ですから、おやつは甘いものだけでなく、おむすびなどの軽食を食べることの意味となります。一方、お菓子は簡単にいうと食事以外に食べる嗜好品のこと。もともとは果物のことを菓子といい、食事と食事の間の時間が長い時に果物を食べていたようです。さらに遣唐使が麦や小麦粉を使い、アマチャヅルからとった甘味料を用いて甘みを付け、揚げて仕上げた唐菓子や唐果物(からくだもの)といったものを持ち帰り、伝えたのが菓子の始まりといわれています。その後、鎌倉時代に製茶技術が伝わってからは、茶の湯の文化とともに発展したのが和菓子の歴史なのです。
「菓子」の「菓」という字は、並び生えた草の象形と、実がなった木を表す象形とで成っています。「果」は果物、木の実を意味します。鈴懸がお届けしているお菓子にも、果物や木の実を使ったものが数多くあります。菜々果の柚子は、美しい柚子の色や風味をそのまま残し蜜煮したお菓子。口どけの良い阿波和三盆でつくられたtatamizeには、かぼちゃの種が食感のアクセントになっています。
食事の種類も豊富で、食べたい時にいつでも不自由なく食べることができる現代。そんな現代に生きる私たちにとっては栄養補給としておやつやお菓子を必ず食べる必要はないのかもしれません。しかしお菓子を食べ始めた遥か昔より、そのお菓子を美味しく食べるために工夫が繰り返えされ、さらに人々が豊かに生きていくことができるようになるにつれ、そこに文化が生まれ、お菓子を職人がつくるようになり技と知恵が育まれ、今に繋がれています。栄養補給としても大切な役割をお菓子が果たしていた昔と比べ、心を和ませる役割としてお菓子は今に生きる私たちにとってお腹を満たす以上に大切な役割を果たしているように感じます。そんなお菓子を大切につくり続けている鈴懸。お菓子というものの成り立ちを大切に想い、「菓」の文字と一緒に今日もお客様へお菓子をお届けしています。