いつもは引き算、ときどき足し算

連載 すずなり

鈴懸 連載すずなり いつもは引き算、ときどき足し算いつも旬の果物や素材をいかした和菓子が並ぶ店頭。和菓子は素材そのものが持つ風味、香り、食感を存分に楽しんでいただけるよう、職人の手技をもって、工程はできるだけシンプルに仕上げます。また、その時の季節に咲く草花や、情景を映し取る意匠も色の重なりや形で表したりと見立てで表現することで、手にとってくださった方それぞれが思い描く草花や情景を重ねることができ、心に響くのです。和菓子の世界はいわば「引き算」。手を加え過ぎず、いかに要素を差し引いて美しく美味しい一つの和菓子にまとめ上げられるかの試行錯誤です。

鈴懸 連載すずなり いつもは引き算、ときどき足し算そんな鈴懸のお菓子づくりの中で、本店 茶舗で提供しているパフェは例外と言えるでしょう。季節に合わせ、素材をいかす味づくりは和菓子をつくる工程や考え方と相違ありません。しかし、一年を通してお楽しみいただける定番の「すずのパフェ」をとってみても、鈴の形をした最中を乗せた上から順に4種の中から3種を選んでいただける自家製アイス、2種の豆、甘さが控えめな生クリーム、季節のフレッシュな果物、水羊羹と層が次々と重なって完成します。普段の和菓子づくりのために厳選した素材や餡、馴染みある羊羹、甘く柔らかく煮た豆などと一緒に、和菓子にはあまり使われることのない生クリームを層で組みわせる。パフェは、それぞれが完成している組み合わせを楽しむ「足し算」の味わいなのです。

鈴懸 連載すずなり いつもは引き算、ときどき足し算足し算をするなかで、絶対と言っていいほどのこだわりの一つが旬のフレッシュな果物を使うこと。甘いシロップに使った缶詰は使いません。フレッシュな果物は、その時々で「今年は甘さが強いな‥‥」や逆に「甘味が主張してこないな‥‥」なんて、でき具合が違うもの。だからこそ鈴懸では毎回試食し、その時の素材に合う足し算をして、少しずつ変えてご提供します。

鈴懸 連載すずなり いつもは引き算、ときどき足し算足し算はパフェを食べ進めていただく中で、次々に味が変化しながら最後まで楽しんでいただけるよう工夫もしています。たとえば秋の初めに登場する「無花果のパフェ」は、甘い無花果の実を引き立てるよう、相性の良い豆乳寒天にぜんざい、さらにカシスの葛ジュレが酸味を加えてバランスをとります。そしてお楽しみなのが、添えられた一切れのレモン。これを絞っていただくと、レモンを足したとたんに爽やかに味変します。ぜひ、最初はそのままで、口が甘さで満たされた時に、レモンをひと絞りして最初とは違う味の変化を楽しんでみてくださいね。

鈴懸 連載すずなり いつもは引き算、ときどき足し算10月に入って登場するのは「栗のパフェ」。栗が大好きな方々には嬉しい栗尽くしのパフェです。こっくりと甘い栗の水羊羹に足すのはカシスとブルーベリーの酸味。そしてこのパフェの栗のアイスクリームには木樽で熟成させて造られるマルサラ酒を少し足し算。木の香りやカラメルを思わせるブーケが栗の美味しさを一層際立たせます。

鈴懸 連載すずなり いつもは引き算、ときどき足し算鈴懸のパフェは全部で5種類。一年中いつでもお楽しみいただける「すずのパフェ」に、美味しい果物が豊富に揃う秋は「無花果のパフェ」と「栗のパフェ」が月替わりで登場します。メニューでパフェを見ると、一見ボリュウムが多く見えますが、フレッシュな果物を使い、寒天や生クリームに至るまで、できる限り一つ一つの甘味を抑えて全体のバランスで整えていますので、「食べるとあっという間に食べ終わっちゃう!」なんてお客様のお声も頂きます。実は茶舗でランチを召し上がった後にデザートとしてパフェを追加される方も多くいるほどなんです。

鈴懸のパフェ寒い時期に旬を迎える苺の季節には「あまおうの苺パフェ」。甘さが強いあまおうに、冬の人気商品である苺大福を思わせるこしあんの組み合わせ。さらにパイ生地やバニラアイス、隠し味に練乳を足しています。和の素材を用いながら、まるでショートケーキのような味わいです。暖かな季節になると、口をさっぱりとさせてくれる「抹茶のパフェ」が登場します。アイスクリームや寒天に姿を変えたほろ苦い抹茶と、添えられたつぶあんや白玉との相性は抜群。季節の果物の酸味が足されることで軽やかな味わいとなっています。どのパフェも案外さっぱりとした味の組み合わせですので「後口が喉の渇かないパフェ」なんておっしゃってくださった方もおられました。ぜひ、鈴懸の足し算の形を季節ごとにお楽しみください。

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