夏はつるりと

連載 すずなり

日に日に気温が上がり、夏の気配を間近に感じるようになってきました。季節の巡りの早さに驚きつつも、暑い時期ならではの“涼”を楽しむお菓子が続々と登場してくるのは嬉しいものです。口当たりが涼やかな、例えばゼリーなどは涼菓として思い浮かべる方も多いと思いますが、涼菓としてのお饅頭もあることをご存知でしょうか?

4月の半ばを過ぎると登場する見た目も涼やかな「麩乃餅」は、その製造工程も暑い時期に最適なお菓子であることを物語っています。生麩の生地で餡玉を包み、蒸したあと流水に沈めて冷やすことで、もちもちとした感触の餅に仕上がります。鈴懸ならではの甘みをおさえたこしあんが、生麩でできた生地のやさしさに程よく合わさり、独特の食感とともに麩乃餅でしか味わえない美味しさを生み出します。

さらに水を通して青々と冴えた笹の葉で、できたての麩乃餅を三角に包み込みます。笹の葉の爽やかな香りがほんのりと餅に移り、目にも涼やかで清々しい一品です。

お召し上がりになるときは、ご自宅で流水か、水を張ったボウルに笹の葉に包まれたままの麩乃餅を入れ、水の中で餅をゆっくりと笹から剥がしてください。氷水に浸した餅は、ひんやりと口当たりもよく美味しさが増します。暑さを感じ始めると店頭に並ぶのを心待ちにしてくださっているお客様も多く、春夏のお菓子の人気ナンバー1が、この麩乃餅です。「麩饅頭」としてよく知られるこのお菓子は、京都が発祥といわれます。生麩を食べる習慣のある京都ならではのお菓子のようですが、日本の中でも特に夏の暑さが厳しいことで知られる京都ならではの夏の涼をとる知恵だったのかもしれませんね。今や、どの地域でも日本の暑さは年々厳しさが増しているようにも感じます。笹の葉の清香に癒され、口にすれば冷んやりつるりとした美味しさに癒される麩乃餅で、ゆるりと涼を楽しまれてはいかがでしょう。

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