入学、卒業、結婚、出産、成人式など人生においての成長のお祝いや、還暦、古希、米寿などの長寿のお祝い、昇進、栄転などビジネスシーンにおいてや、新築祝い、受賞祝いなど人生の中であらゆるお祝いの場面が訪れます。紅白饅頭はそんなお祝いのシーンにのみ登場する特別なお菓子。おせちなど、さまざまな行事食や伝統行事に用いられる菓子には縁起を担いで色や形、素材などが選ばれるものですが、紅白饅頭にもいわれがあるようです。なぜ紅白という色の取り合わせが、おめでたいときにふさわしいとされるのか、ご存知ない方も多いのではないでしょうか。一説によると「紅(赤)」は赤ちゃんを表し、誕生や生命を象徴するとされ、一方「白」は人が亡くなったときに身につける死装束が白色であるように、死や別れを表すとされます。紅白の揃いとすることで人の一生を意味するといわれたり、もともと中国から「吉事と凶事」を意味することとして紅白の文化が伝来したとも言われます。日本にもハレとケの文化があるように、華やかなる時も平穏な日常も、全て合わせもっての人生の素晴らしさをお祝いごとにいただく慶事菓子に表しているのかもしれませんね。そんな深いいわれがある紅白饅頭は、甘さ控えめなこしあんを包んだやさしい味わいですので、ぜひお菓子として美味しく召し上がっていただければと思います。
お祝いごとにいただく赤飯も、日本では古くから赤い色は邪気を払う、災いを避けるとされて神様にお供えしたり、お祝いの席で振る舞われたりしてきました。色の中でも赤や白は特別な意味をもってお祝いの席に用いられています。
色だけでなく、千年生きるとされる鶴や万年生きるとされる亀も吉兆の象徴とされます。特に慶事で用いられる亀の意匠は「蓑亀(みのがめ)」といい、いつも目にする亀の姿ではなく尻尾のようなものが付いています。これは尻尾ではなく、水の中で長い間過ごしていると甲羅に藻が付着する姿が古来より珍重され、長生きの亀を吉兆、不老長寿の証とされているのです。
お祝いの席にふさわしい慶事菓子には色や形、名前の付け方など全てにおいて意味をもち、そのいわれを知ることでより深く日本文化の素晴らしさに触れることができると思います。紅白饅頭やお赤飯、縁起菓子だからといってかしこまった慶事だけでなく、ちょっとしたお祝い事を日常に気軽に取り入れて目でも楽しみ、食べて味わって、自分だけのハレの日として暮らしを楽しんでみてはいかがでしょう。