秋の夜長は月見で一杯

連載 すずなり

鈴懸 連載すずなり 秋の夜長は月見で一杯日中はまだまだ暑い日が続きますが、それでも9月に入れば朝晩の風は涼しく、秋へと季節が移ろっていることを感じます。秋の夜空は澄み渡り、月が美しく輝きます。今の時期は一年を通して大気中の水蒸気量が少ないために空気が澄み、月がくっきりと見えるのです。また秋の月は、夏や冬のように高すぎたり低すぎたりせずに、人の眼からみてちょうど良い高さに昇ることも月を美しく感じることができる理由の一つのようです。特に一年の中で最も美しいとされるのが中秋の名月。今年は9月29日金曜日に楽しめます。


鈴懸 連載すずなり 秋の夜長は月見で一杯日本では古くよりだんごを供えて、中秋の名月を愛でてきました。この観月が日本での伝統文化として根付いたのは中国に起源しますが、この十五夜と呼ばれる中秋の名月が昇る頃は米の収穫時期に重なったことから、十五夜のお月見は日本独特の月信仰に由来します。当時は、農耕の神様とされる月神、月読命(つくよみのみこと)に米で作った丸い団子を月に見立てて供えることで、もうすぐ収穫となる米の豊作を祈願したことが始まりとされます。日々慌ただしく時が過ぎるなかでも、せめてこういった季節の折り目に設けられた意味ある日本文化を意識するひとときを持つことができたら、心に安らぎを覚えるのではないでしょうか。

鈴懸 連載すずなり 秋の夜長は月見で一杯お月見といっても、月見団子を用意したり、すすきを飾ったりと構えることなく、美しい月を理由に今だけの時期を楽しむくらいの方が、今を生きる私たちの暮らしには丁度良い豊かさを添えてくれる気がします。もちろん折々の行事に合わせ、室礼を楽しむことも素敵です。それぞれの暮らしに合わせて、感謝したり楽しんだりできたら、日々をもっと楽しく過ごせると思うのです。十五夜となる29日まで三日月や半月と、月は美しく輝きながら毎日姿を変えています。鈴懸でも9月はお月見のお菓子としてぴったりな「お月見うさぎ」や「お月見だんご」の他にも、9日の重陽の節句を祝う「着綿」、お彼岸に合わせ「おはぎ」「栗おはぎ」「白小豆と生姜のおはぎ」などなど、歳時に合わせたお菓子、秋の味覚をふんだんに使ったお菓子、秋の草花の美しさを見立てたお菓子など豊富に揃います。お酒が好きな方なら、和菓子と一緒に日本酒をいただくのも乙なもの。その日に昇る月に、お持ちのお好きな酒器を選び、季節の和菓子を合わせて、秋の晩酌は毎日空を見上げる時間を持つのも素敵だと思いませんか?文化を知り、日々の暮らしの中に楽しみとして自分なりに取り入れる。秋の夜長は、そんな大人の遊びはいかがでしょう。

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