菓子養生

連載 すずなり

鈴懸 連載すずなり 菓子養生晴れても降っても独特の湿度を含んだ空気が立ち込める日本の夏。それに加え、最近では太陽までも年々照りつける強さを増しているように感じます。決して快適とは言い難い夏の時期を、少しでも涼しく、体の負担を軽くするために、私たち日本人は古くから知恵を持って様々に工夫を凝らし、暮らしてきました。例えば「打ち水」。水が蒸発するときの気化熱で周囲の温度を下げることができることを利用して、ベランダや玄関先、路上に水を撒いて涼をとります。濡れた地面を通った風は心地良く、土埃も鎮まり、水玉を抱えた草木は見た目にも涼やかです。鈴懸でも本店の軒先や、本社の玄関先の植え込みに打ち水をし、涼やかにお客様をお迎えしています。

鈴懸 連載すずなり 菓子養生また、その時々の季節の食材を用いた食べ物で体を労わり、健やかに保つことを「食養生」といいます。薬膳や漢方などにおける食養生は体を正す理論に基づいた方法が色々と細かくあるものですが、熱が体の中に溜まりやすい夏の時期には体を冷ますものを摂り、逆に体の芯から冷えてしまう冬の時期には積極的に体を温めるものを摂ることを意識して日々の食事を行うことで、十分な養生になると思うのです。お菓子の世界でも、夏のお菓子に用いられる旬の素材は、やはり夏ならではの効能をもたらせてくれるものなのです。8月になると、鈴懸の工房はみずみずしい大分県産のかぼすの爽やかな香りで包まれます。青々とした果皮の特有の香気を放つ未熟果時のかぼすを一つ一つくり抜いて果汁と砂糖だけでゼリーをつくり、丸い果実に流し固めた「清果(さやか)」は、その名の通り、清々しい香りが際立つ爽やかな涼菓です。かぼすには、強い抗酸化作用があるといわれ、その酸味はクエン酸によるものですので疲れを取る効果も期待できます。

鈴懸 連載すずなり 菓子養生美味しいだけでなく、β-カロテンやミネラル、ビタミンを豊富に含むことで貧血の防止が期待できるほか、内臓の機能低下や喉の渇きにも良いとされる杏(あんず)を使ったお菓子がこの夏、2品お目見えします。その一つは「杏(あん)」。杏餡と、こしあんの2層を本葛で包んだ見た目もに涼やかなお菓子です。葛も古くから食品だけでなく生薬として用いられており、根は「葛根」という生薬名で知られるほど解熱などに効果をもたらします。甘酸っぱい杏と餡の程よい甘み、つるんとした口当たりをお楽しみください。この「杏」は、東京店と名古屋店のみのお取り扱いとなります。

鈴懸 連載すずなり 菓子養生そしてもう一つは「杏ケーキ(あんずケーキ)」です。杏シロップがたっぷり入った浮島生地には刻んだ杏、上には杏の甘露煮をのせた、しっとりとしたケーキです。少し冷やしても美味しくお召し上がりいただける暑い夏にぴったりのお菓子です。暑い夏は、いつも以上に体力も奪われ、疲れやすいものです。少しでも一息つく時間をとり、体にも心にもやさしいお菓子で養生してお過ごしくださいね。

 

杏(あん)  販売期間 8月中旬~8月31日(東京・名古屋店舗のみ)

杏ケーキ  販売期間 8月1日~8月15日(福岡店舗のみ)

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