形・型・カタ

連載 すずなり

和菓子が美しいと評される一つの要因として、その細工の繊細さがあげられるだろう。一枚の葉を表現するにしても春夏秋冬で色だけではなく、その時々の葉が持つ柔らかさや勢い、もしくは枯れゆく中にある美しさをも表していく。そんな細かな変化に季節感や、あるときは人が持つ心情さえも映し取る和菓子をつくるときに用いられるのが菓子型である。

ひし形ひとつにしても、まっすぐな線で囲むのではなく、少し内側にシェイプさせることでモダンな印象を与えたり。

平べったい小さな円柱だって、ただ平らなだけではなく、そのお菓子を手に取った時に、ほんの少しの窪みを感じることができる。その僅かな形のこだわりに、鈴懸らしさが宿っているのかもしれない。

何十年にも渡り、鈴懸工房の中で使い続けられている菓子型は無数にある。さらにその型を何十年も使い続けている職人の手から、今も美しい菓子が毎日生み出されていく。職人の手は、葉を表現する時は柔らかくしなって菓子型を押し、節分の鬼など強面の表情を型抜く時は力強く全身の力が指先を通して押し込められる。職人の指先もまた和菓子を作り出す大切な型なのだ。代々受け継がれる菓子型。力加減ひとつでその型が生み出す表現を無限にする職人の手。その手こそが、一番大切な鈴懸の型であることは間違いないだろう。

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