三者三様

連載 すずなり

⼤⾖を煎って挽いてできる⻩粉は、⾹ばしい⾹りで⾵味も豊かなため、砂糖と混ぜて餅に絡めたり和菓⼦の材料とするなど、古くから様々に⽤いられてきました。今でも変わらず、その素朴な味わいを好まれる⽅は多く、鈴懸のお菓⼦でも⻩粉の味わいをいかした商品はいつの季節でも⼈気です。春に登場する本蕨餅は、もっちりとした本わらびに、ふんだんにまぶされた⻩粉が楽しめます。他にも、鶯餅や⻩粉⽩⽟、⿊⾖⻩粉のぼたもち、3種類の味が楽しめるtatamize の⼀つは⻩粉と和三盆でつくられているなど、数々のお菓⼦が⻩粉を纏うことで⼀層美味しさを増しています。
ひとくちに⻩粉と⾔いましても、鈴懸ではお菓⼦に合わせて3種類の⻩粉を使い分けております。まずは、よく⾊々なお菓⼦づくりや料理に広く⽤いられる⼤⾖を原料とした「⻩粉」。きめ細かで⾊は明るく、⼤⾖本来の上品な⾵味で少し⽢さが感じられるのが特徴です。鈴懸ではtatamize の⻩粉や鶯餅のように、味の特徴ももちろんですが、ふんわりとした優しい⾊合いに仕上げたいお菓⼦に⽤いています。
次に「⻩粉」を強めに焙煎することで、より⾹ばしく仕上げている「深煎り⻩粉」。こちらも原料は⼤⾖で、きめの細やかさは⻩粉と変わりません。特徴的な⾹ばしさが味のアクセントとなる、しっかりとした⾵味は、本蕨餅にてご堪能いただけます。

そして3種⽬は少し⿊い粒が⾒える「⿊⾖⻩粉」。こちらは、先にご紹介した2つの⼤⾖を原料とする⻩粉とは異なり、⿊⼤⾖を原料とした⻩粉です。きめが少し粗めで⾹りが強く、しっかりと濃い味わいです。素朴なお菓⼦との相性が抜群ですので、ぼたもちに使⽤しています。ぜひ⿊⾖⻩粉の⾵味を⼝いっぱいに味わっていただきたいと思います。
原料の⼤⾖の種類や焙煎の仕⽅を変えることで味、⾊、⼝に含んだ時の感触などがわずかですが変化します。この繊細な違いを特徴として⾒極め、お菓⼦に合わせて使い分けをしています。もともと鈴懸では、お菓⼦づくりに使⽤していたのは「⻩粉」と「⿊⾖⻩粉」の2種類だけでした。現在、本蕨餅に使⽤している「深煎り⻩粉」も、以前は「⿊⾖⻩粉」を使⽤してつくられていたのです。しかし、時代が移り変わるにつれ、味わいにも流⾏りのような変化が訪れます。どれが正解というものは無く、⻑く販売しているお馴染みの商品でも、その時の“今”の感覚をもって常に味や形、素材など吟味を重ね、変化させています。

そんな中で、本蕨餅に⽤いる⻩粉は、今まで使⽤していた素朴な「⿊⾖⻩粉」よりも、⾹ばしさを強く感じることのできる味わいの「深煎り⻩粉」の⽅が、本わらびでつくられた、ほんのりと⽢くぷるんとした⾷感の本蕨餅に今はぴったり合う感覚があり、2〜3年前に⽤いる⻩粉の種類を変えたのです。お気づきの⽅、いらっしゃいますでしょうか?もし気づいておられるなら、かなりの鈴懸通、⻩粉通の⽅ですよね!定番の商品であったとしても、いえ、定番の商品だからこそ、その時代に合わせて気づくか気づかないかのわずかながらの調整を⽇々⾏なっているのです。その変化が常に“今”の皆様のお⼝に合う定番となって頂けているとしたら、鈴懸としても嬉しい限りです。
鈴懸本店の茶舗でも⻩粉を堪能いただけるお菓⼦がございます。⼀つは、しらたま。使⽤しているのは「⿊⾖⻩粉」です。⼝に⼊れる直前の⽩⽟にご⾃⾝でお好きなようにまぶしていただけます。他にも、繊細な味わいの「⻩粉」をふんだんにふりかけ、相性の良い⿊蜜をかけてお召し上がりいただく蕨餅も⼈気です。お持ち帰りいただける商品の本蕨餅には⿊蜜は付かず、⾹ばしさが特徴の「深煎り⻩粉」の味わいだけで楽しんでいただくようにしております。お持ち帰りいただくものと茶舗でお召し上がりいただけるもの、⼆つの蕨餅の味の違いを⾷べ⽐べてみてはいかがでしょう。お菓⼦をお好みの⻩粉の味でお選びいただくなど、かなり通な楽しみ⽅も⾯⽩いですよね。また、違う種類の⻩粉が⽤いられたお菓⼦ごとに、⼀緒にいただくお茶の種類も緑茶やほうじ茶、⿊⾖茶などと変えて合わせていただくことで、新たな味わいの広がりがお楽しみいただけます。気づくようで気づかない、でも気づいてしまうと、その味わいの違いや深さにますます虜になってしまう⻩粉の魅⼒。本蕨餅が発売されている4⽉から8⽉までは、鈴懸の店頭に3種類の⻩粉が使われたお菓⼦が揃っております。ぜひ鈴懸で⻩粉のお菓⼦の味⽐べをお楽しみください。

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